2010/10/10

EDXスペクトラム3

どうも僕です.

スペクトラムに関する用語は沢山ありますんで,ここで一気に説明しておきたいと思います.

連続X線
 入射電子は,試料元素の原子核による影響を受けてエネルギーを失います.この損失エネルギーが電磁波となって試料外に放射されます.これを制動輻射(bremstrahlung)と言いまして,発生した電磁波を連続X線(continuous x-ray)と呼んでいます.バックグラウンドの原因の1つとなります.

エスケープピーク(escape peak)
 EDX分析時には,試料から放出されるX線を検出器で検出するとき,検出器に入射したX線のエネルギーの一部が検出器の構成元素であるシリコン(Si)などの内殻電子励起に使われてしまい,SiKα線のエネルギー(Esi=1.740keV)に相当するエネルギーを失ってしまいます.そのために,E-Esiの位置に小さなピークが現れます.これをエスケープピークと呼んでおります.スペクトルの解析の際には注意を要するのですが,最近のEDXシステムではコンピューター処理によって補正することが可能になっています.
Bruker AXS参照

サムピーク(sum peak)
Goldstein et al. 2003
 EDX分析では,試料から放出される特性X線を検出器で検出して,X線のエネルギーに比例したパルス電流を生じさせて,多チャンネル波高分析器で選別して測定するのですが,複数の特性X線がほぼ同時に検出器に入射すると,これらは別々のパルスとして認識することができません.この場合,試料からのスペクトルピークとは別に,認識されなかった複数のX線のエネルギーの和の位置にピークが現れます.これをサムピークと呼びます.
 僕の経験では,数百秒程度の分析時間であれば,サムピークの影響はほとんど無視できると思っています.というよりも,ほとんど認識できないレヴェルです.EDXのエネルギー分解能と検出感度を考えた場合,やはり無視できるでしょう.
 ちなみにサムピークを見ようと思えば,数千秒単位でスペクトラムの取り込みを行う必要があると思います.特に鉄やマンガンなどで試されると良いと思うのですが,Kα+Kα線のサムピークやKβ+Kβ,Ka+Kβのサムピークなどが現れるでしょう.エネルギー座標は,KαのエネルギーとKβのエネルギーを単純に足してやると,予測できます.ただ,ピークが見れるかどうかは判らないですけどね!
 さらにやっかいなことに,サムピークの予測位置と別の元素のエネルギー値とがほぼ同じ場合があります.例えば,AlKα(1.487keV)×2≒AgLα(2.984keV)orThMα(2.996).こうなると定性分析するのがとても複雑になります.いろいろと考えてみましょう.

Si(Li)検出器のエスケープピーク
 Si(Li)検出器による内部シリコン蛍光ピーク(internal si flourescence peak)は,入射X線が検出器の不感層(dead layer)でSiK線を励起して,そのSiK線を検出するピークであります.


つかれたーーー

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