2010/10/10

定量補正計算1:ZAF補正;吸収補正(A)

どうも僕です.

次は,吸収補正です.

試料に侵入した電子は,原子による散乱を受けながらエネルギーを失っていきます.この散乱過程で電子殻の内殻をイオン化して特性X線を発生するのですが,特性X線の発生強度は深さ方向に分布を持った形と見なすことができます.そして,ある深さで発生したX線は,試料表面に放出されるまでに構成元素によって吸収を受けながら減衰していきます.この吸収量を補正するのが吸収補正(absorption correction)です.ちなみに,ZAF補正を回すときは,この吸収補正から計算を開始させます.
 X線の吸収量は,構成元素の質量吸収係数(μ/ρ)とX線検出器の取り出し角θで定義された変数χに依存します;
 χ=(μ/ρ)×cscθ
そして,ある深さρzで発生したX線は,exp(-χρz)の吸収を受けて強度が減少します.ちなみに,φ(ρz)補正法は,この吸収補正と原子番号補正をまとめて扱います.
 A元素の吸収補正係数GAAは以下のように表されます;
 GAA=fUnkAUnkA)/fStdAStdA)

原子番号補正の場合と同様に,f(χ)関数は多くの研究者によって提案されております.吸収補正係数GAAは,試料元素の質量吸収係数μ/ρと入射電子エネルギーE0に依存しているので,試料元素の原子番号が小さければ小さいほど,加速電圧を高くすればするほど大きくなる傾向があります.なお,X線検出器の取り出し角が低いほど吸収補正係数が大きくなります.

最も(たぶん)一般的なf(χ)関数は;
 f(χ)=(1+h)/((1+χ/σ)×(1+h(1+χ/σ)))
 σ=レナード定数(例えば,2.39×105/(E1.50-E1.5C(A)あるいは実験的に求められた表などを参考する
 hUnkorhStd=ΣCi×hi
 hi=1.2×A/Z2
などです.

テキスト入力ってたいへんだなw
おしまいw

定量補正計算1:ZAF補正;原子番号補正(Z)

どうも,おいらです.
最近ふと思ったけど,こういう記事を書く場合の英数字って,半角がいいのかな?全角がいいのかな?ただそれだけですけどね,,,

さて,今日は原子番号補正について書いてみようと思います.

試料へ照射される入射原子は,構成原子の相互作用により,試料内部へ散乱していく侵入電子と試料表面より外部に放出される後方散乱電子(backscattered electron)に分かれます.この割合は,構成原子と入射電子のエネルギーによって変化します.平均原子番号(=ΣCi×Zi)が大きい試料は後方散乱電子の比率が高くなり,平均原子番号が小さい試料は侵入電子の比率が高くなります.比率の違いは,発生するX線強度にも影響します.ある元素の相対強度を求めるときには,標準試料と未知試料の平均原子番号の違いが大きいほど,X線の発生に寄与する電子の数に影響します.この差による重量濃度と相対強度の間の関係を補正するの原子番号補正であります.
A元素に関する原子番号補正係数GZAは,以下のように表されます.
 GZA=(RUnkA/RStdA)×(SStdA/SUnkA)
  S=阻止能(stopping power factor)
  R=後方散乱因子(backscatter factor)

阻止能や後方散乱因子については,1960年代に数多く提案されました.その後にも,検討は続いております.たくさんの実験式がありますが,ここでは全てを網羅するのは大変なので,一部紹介してみます.

阻止能(stopping power factor)
 S=(Z/A)×ln(1.116×E/J)
 E=(E0+Ec)/2 電子の平均エネルギー
 E0=入射電子のエネルギー(加速電圧)keV
 Ec=臨界励起エネルギー(critical excitation energy)keV
 J=平均イオン化エネルギー(mean excitation energy) eV
  実験的に値が求められている
 Z=原子番号, A=原子量
以上のように,E, J, Z, Aの各値から元素毎の阻止能Sを計算します.そして化合物である試料の阻止能は,すべての構成元素のS値から計算します.未知試料のSUnkを求めるためには,すべての構成元素に対するここのSi値を求めて積み重ねて加算します;
 SUnk=ΣCi×Si=ΣCi×(Zi/Ai)×ln(1.166×E/Ji)

後方散乱因子(backscatter factor)
 RUnkA=ΣCi×Ri
 Rの値は,実験的に求められていたり,多項式によって表されたりしております.

ふう,大変w
おしまい

定量補正計算1:ZAF補正;概略

どうもボクです. 定量補正計算について書いてみることにしました.これが結構ながくなるんだわ.何回かに分けて書く予定.
前にも書いたけど,定量分析で元素の濃度を求めるには,未知試料に含まれる元素の特性X線強度と,同一の元素を含み化学組成が既知の標準試料の特性X線強度を測定します.その強度比K(relative intensity, K-ratio)は,次のようして表されます.
=IUnk/IStd
Unk=未知試料中のA元素の特性X線強度
Std=標準試料中のA元素の特性X線強度

さらに,元素Aの重量は
Unk=G×CStd×K
Unk=未知試料中のA元素の重量濃度
Std=標準試料中のA元素の重量濃度
G=補正係数

補正係数Gを求めるには,補正計算を実行しなければなりません.補正計算は,試料のマトリックス効果を補正する物で,全ての元素の相対強度をもとにして,補正計数Gをはじき出します.そのGを求める方法を補正計算法とか補正法とか呼ばれていまして,何種類か提案されております.一般的に利用されているのは,ZAF補正,Bence-Albee補正,φ(ρz)補正などがあります.

やっと本題ですが,ZAF補正(ZAF correction)は,三種類の補正を組み合わせたものであります.それらは,吸収補正(A:absorption correction),原子番号補正(Z:atomic number correction)そして蛍光(励起)補正(F:flourescence correction)と呼ばれていして,各々の補正係数を計算していきます.
未知試料中の元素Aの重量濃度CUnkを求めるには以下のような補正式で表すことができます.
Unk=G×G×G×CStd×K
=原子番号補正係数
=吸収補正係数
=蛍光(励起)補正係数
です.

各補正について,おいらは,そんなに詳しくないけれど,簡単に説明するとすれば,
原子番号補正(Z)は,試料への照射電子が侵入電子と散乱電子に分かれる比率を補正します.
吸収補正(A)は,試料中で発生した特性X線が試料外へ出るまでに吸収される量を補正します.
蛍光(励起)補正(F)は,試料中で発生したX線によって励起された蛍光X線強度を補正します.

タグうち疲れたから,今日はおわりw

EDXの定量分析手順

どうもボクです.

EDXの分析手順を簡単にフローチャートで書こうと思います.編集が面倒なんで,すべてテキストです;;

定量したい元素の確認

標準試料の選択

分析条件の設定

標準試料のスペクトラムの収集と保存

標準試料リファレンスファイルの作成

未知試料のスペクトラムの収集(と保存)

補正計算(ZAF, Bence-albee, φ(ρz))

定量結果

EDXを用いた定量分析では,定量したい元素のスタンダードファイルをあらかじめ作成・保存しておくひつようがあります.フツウは,定量したい元素って,だいたい決まっているから,それぞれの元素を含むような標準試料を用意しておけば良いと思います.また,X線発生の観点から言えば,標準試料と未知試料は似たような物質の方が良いと思います.例えば,未知試料が金属なら,標準試料も金属にするとか,,,,
 あと,未知試料をはかっているときに,予想外の元素を認識する場合があります.そういう場合は困りますね,,,標準物質を取り扱っているメーカーなどに問い合わせるのが一番いいと思います.

定量分析を行う際の基本は,未知試料のスペクトラムの収集と標準試料のそれの分析条件を完全に一致させることです.ここが一番難しい.使い方を習った程度で定量分析が行えるとはとうてい思えない.EDXに関わらず,あらゆる分析装置に共通するのではないでしょうか?ちゃんと目的意識を持ちながら分析に取り組むことが大切だと思います.

おわり

EDXの定量分析の歴史

どうも僕です.

何から書こうか迷う今日この頃です.EDXスペクトラムの波形処理について書こうか,そんなしょーもない事は無視して定量分析補正法について書こうか,迷ってます.まぁ両方書きたいんだけどね.優先順位を決めなきゃ・・・

定量分析も含めてEDXに関する歴史のおさらいでもしよう!

戦後1940年代に,フランス(だったと思う)のPh.D Studentだった,R.Castaingとその先生によって,SEM-EDX(WDXかも・・)の基本原理の発表がありました.本質的な部分は現在と変わっていないみたいです.

1950年代は装置の開発かな?日本やフランスやそれ以外の国でも開発に取り組んだはず.Castaingはフランス人だから,Camecaが現在でも有名なのはCastaingの影響力があったのかもねぇ....

1960年代になって,定量精度をもっと上げることが課題になったので,定量分析に関する研究が多数行われました.その成果として,ZAF補正やBence-Albee補正が誕生しました.

1970年代になって,大型コンピュータを使って定量分析の補正計算を処理するようになりました.たぶん,それ以前は,手計算だったのかも・・・

1980年代になって,コンピュータの処理能力が向上して,データ処理が容易になった

1990年代になって,φ(ρz)補正が提案されました(たぶん)

2000年代以降の歴史はよく知りません...

とにかくSEM-EDXの基本原理は戦後まもなく完成したって事は言えるでしょう.それ以降,現在に至るまでは,IT業界の発展と共にEDXの充実してきたって程度の認識でよいような気がします.

おしまい

EDXの定量分析2

どうも僕です

EDXによる定量分析には,大きく分けて二通りあります.一つめは,前の記事で書いた相対強度を求める方法です.もう一つは,実は標準試料を用いなくても定量分析が行えます.それをスタンダードレス法(standardless correction)と呼びます.

もう少し詳しく書くと,未知試料の各元素のX線強度から理論的に補正計算を行い,合計濃度が100%になるように定量分析値を出す補正方法のことをスタンダードレス法と呼びます.また,あらかじめ取り込んでおいた標準試料のX線強度を利用した半スタンダードレス法というものも考案されております.標準試料の特性X線を取り込む手間が省けるので,短時間で定量分析が行えるのがスタンダードレス法の利点であるのですが,正直言ってオススメできない.その理由は,誤差が大きすぎて「真」の定量分析とはほど遠い分析値しか得られないためであります(ブログ管理人の経験ですけどね).
 また今度,前の記事で書いた定量分析法とスタンダードレス法の分析値の違いについて触れておきたいと思っております.

さて,前の記事で書いた相対強度を求めてからの補正計算法なのですが,数多く提案されております.その中で有名なのが,
 ZAF補正
 Bence-Albee補正
 φ(ρz)補正
の3つです.また,あまり使われていないけど検量線法などもあります.

どの補正法を使うにしても,重要なのはX線スペクトラムの波形処理を正確に行うことなのです.波形処理が不十分であれば,正しい定量分析は行えないと思っております.まぁでも,それについてはユーザーサイドで要求する分析精度の程度に依存しますけどね.

次の記事からは定量分析(波形処理~補正計算)についてゆっくりと書いてみようと思います.

EDXの定量分析1

どうも,ボクです.

今日はEDXの定量分析について書いてみようと思います.

EDXでも他の装置でも,定量分析と言えば,未知試料(unknown sample)と標準試料(standard sample)の強度を測定して,その値を補正してから元素濃度を求めるのが一般的なやり方です.
 EDXによって取り込まれた特性X線の強度は,加速電圧や試料電流,検出器の取り出し角にとても依存しているので,これらの条件を同一にして未知試料と標準試料の特性X線強度を求める必要があります.また,若干ではありますが,炭素蒸着の厚さやユーザーの熟練度によっても分析値に影響が出てくるかもしれません.
 例えば,A元素について,未知試料の特性X線強度をIUnk,標準試料のそれをIStdとすれば,これらの比を以下の式のように表すことができて,それを相対強度KあるいはK-ratioと呼びます.
  K=IUnk/IStd
この相対強度K(A)に補正係数G(A)をかけると,A元素の濃度CUnkが求まります.
  CUnk=G×K

もう少し詳しく書くとすれば,補正計数G(A)は
  G=CStd×G(補正計算法によって得られた値)×G(ユーザーの熟練度)
と表現しても差し支えないかもしれません.

 最近のEDXをはじめとする数多くの分析装置では,G(ユーザーの熟練度)の部分をできるだけ1に近づけるような努力の集大成であるアプリケーションが導入されております.おそらくメーカー側は「誰にでも簡単にできる定量分析!」って感じでアプリケーションを開発していると思われます.これが良いのか悪いのかは,はっきりと申し上げられないけれど,基本的な定量計算法の手順は少しくらい理解しておいても損はしないかと思います.

EDXの分解能3

どうもボクです.

EDXの分解能って,結局なんなのかって言うと,いかにしてシャープなピークを得ることができるか!って感じじゃないでしょうか.でも,多くの希土類元素を含むようなヘンテコな試料を除けば,カルシウム(Ca)より原子番号の大きいピークは,重なり合うこともないので,こういうこだわりは無視すればいいのですが,軽元素(ホウ素Bから窒素Nくらいまで)の定量分析に分解能の値が影響します.具体的には,以下のスペクトラムを見てください.
EDAX参照

このスペクトラムは,ナイロンの分析例を示す物ですが,分解能が良ければ良いほど(値が小さければ小さいほど),ピークの重なりが小さいですね.これって重要で,そのうち書くけど,定量分析を行う際のガウシアンフィッティングにモロに影響するんですよ.ピークの分離が優れていれば優れているほど,きちんとした定量分析がおこなえる(はず).

日本のEDXメーカーのHPを参照してみれば
日本電子さんでは,133-144eV以下
日立さんでは,133eV以下
EDAXさん,130-138eV以下
堀場さんでは,133-137eV以下
島津さん,不明
たまに画像をお借りしてる4piさんは,129-132eV程度のエネルギー分解能を持つ検出器が開発されております.これらの値は,分析対象物が何であるかの場合に考えなくてはなりませんけど,あんまり気にしなくてもいいんじゃないでしょうか?wエネルギー分解能が良ければ,正しい定量分析ができるって訳ではありませんからね!

PS
世の中には波長分散型のX線検出器ってのがあります.いわゆるWDXとかWDSと呼ばれているヤツです.WDXがなんで精度の良い定量分析ができるかというと,WDSの分解能はだいたい10eV前後だからです.スペクトラムのピーク分離が優れているので,EDXでは分析できないような元素の分析にも向いているようです.まぁそんな感じです.
EDAX参照

EDXの分解能2

どうもボクです.

EDXの分解能について,先日記事にしてみました.今日はその補足です.

EDXの分解能の決定には,いくつか要素があって,それは,検出素子内での生成電荷のばらつき,前置増幅器の雑音,電気回路の安定度などです.このなかで,生成電荷のばらつきによるエネルギー分布の広がりΔEは,以下のように提案されています.



F:ファノ因子(0.05-0.13)
ε:一対の電子・正孔対を生成するのに必要な平均エネルギー
E:入射X線のエネルギー
です.

ファノ因子は,理論的に求められているのですが,Si(Li)検出器では,Fは,だいたい0.05-0.13であります.検出素子の結晶に格子欠陥や不純物などが少なくて結晶性の良い物であれば,Fは0.05に近づきます

εは,Si(Li)検出素子が77Kであるときに3.7eVくらい(文献によって様々,だいたい3.6-3.9かな??)です.77K=液体窒素の温度でいいと思う.この値が小さいと,X線量子あたりに発生する電荷量が大きくなるので,エネルギー分解能がよくなります.ちなみに,ガス比例計数管のイオン化には約30eV,NaI(Tl)シンチレータの光電子発生には約300eVのエネルギーが必要となるので,Si(Li)半導体検出器が,他のX線検出器と比べて感度がよいのが特徴です.

それから,エネルギー分解能を決定しているもう一つの要素は,前置増幅官の雑音(ΔE0)は,漏れ電流,静電容量,冷却温度などによって決定される値で,数10eVです.

ネット上で,エネルギーとΔEのグラフをゲッツしましたが
出典がどこか忘れちゃいました><

で,普段,エネルギー分解能と呼んでいる値は,FとΔE0の値と,E=5.940(MnのKα線)を代入した値のことです.

EDXの分解能

どうも僕です.

EDXのエネルギー分解能って分析にかなり影響されるのですが,今回は,そのエネルギー分解能についてちょっと書いてみたいと思います.

エネルギー分解能は,通常MnのKα線(5.895keV)の半値幅(full width at half maximum;fwhm)の値を用いています.以下に模式図を示します,
ウィキペディア参照
これって,単に半値幅と言うときが多いけれど,正確には半値全幅と呼びます.(ボクも今まで知らなかった・・・まぁ英語をちゃんと訳したらこうなるよねw)

あ,今までなんにも書かなかったけど,EDXのスペクトラムのピークって大体ガウス分布≒正規分布と見なすことができます.ガウス分布の数式って
ウィキペディア参照
と書きます.で,これを展開すると,
ウィキペディア参照
正規分布の半値幅は,標準偏差 σ の約2.35倍であることが判ります.

これって重要な事なんですよね.まぁまた今度書くけど,エネルギーピークをガウスフィッティングして,そのピークの強度(intensity)を求めて定量計算を実行するんですが,その際に標準偏差σもはじき出されるわけです.まぁ何が言いたいのかというと,標準偏差から半値幅を求めた場合,メーカーがアプリケーションに組み込んだ半値幅計算値と若干違う場合があります>< 気をつけましょう・・・ で,アプリケーションで半値幅を求める機能ってのは,どこのメーカーのソフトでも備え付けられているけど,以下のような感じです, 4pi参照

おしまい

EDXスペクトラム3

どうも僕です.

スペクトラムに関する用語は沢山ありますんで,ここで一気に説明しておきたいと思います.

連続X線
 入射電子は,試料元素の原子核による影響を受けてエネルギーを失います.この損失エネルギーが電磁波となって試料外に放射されます.これを制動輻射(bremstrahlung)と言いまして,発生した電磁波を連続X線(continuous x-ray)と呼んでいます.バックグラウンドの原因の1つとなります.

エスケープピーク(escape peak)
 EDX分析時には,試料から放出されるX線を検出器で検出するとき,検出器に入射したX線のエネルギーの一部が検出器の構成元素であるシリコン(Si)などの内殻電子励起に使われてしまい,SiKα線のエネルギー(Esi=1.740keV)に相当するエネルギーを失ってしまいます.そのために,E-Esiの位置に小さなピークが現れます.これをエスケープピークと呼んでおります.スペクトルの解析の際には注意を要するのですが,最近のEDXシステムではコンピューター処理によって補正することが可能になっています.
Bruker AXS参照

サムピーク(sum peak)
Goldstein et al. 2003
 EDX分析では,試料から放出される特性X線を検出器で検出して,X線のエネルギーに比例したパルス電流を生じさせて,多チャンネル波高分析器で選別して測定するのですが,複数の特性X線がほぼ同時に検出器に入射すると,これらは別々のパルスとして認識することができません.この場合,試料からのスペクトルピークとは別に,認識されなかった複数のX線のエネルギーの和の位置にピークが現れます.これをサムピークと呼びます.
 僕の経験では,数百秒程度の分析時間であれば,サムピークの影響はほとんど無視できると思っています.というよりも,ほとんど認識できないレヴェルです.EDXのエネルギー分解能と検出感度を考えた場合,やはり無視できるでしょう.
 ちなみにサムピークを見ようと思えば,数千秒単位でスペクトラムの取り込みを行う必要があると思います.特に鉄やマンガンなどで試されると良いと思うのですが,Kα+Kα線のサムピークやKβ+Kβ,Ka+Kβのサムピークなどが現れるでしょう.エネルギー座標は,KαのエネルギーとKβのエネルギーを単純に足してやると,予測できます.ただ,ピークが見れるかどうかは判らないですけどね!
 さらにやっかいなことに,サムピークの予測位置と別の元素のエネルギー値とがほぼ同じ場合があります.例えば,AlKα(1.487keV)×2≒AgLα(2.984keV)orThMα(2.996).こうなると定性分析するのがとても複雑になります.いろいろと考えてみましょう.

Si(Li)検出器のエスケープピーク
 Si(Li)検出器による内部シリコン蛍光ピーク(internal si flourescence peak)は,入射X線が検出器の不感層(dead layer)でSiK線を励起して,そのSiK線を検出するピークであります.


つかれたーーー

EDXスペクトラム2

どうも,ボクです.

スペクトラムについて,色々と補足しなければいけないと思った;;

まず,EDXスペクトラムは,だいたいですが,分析対象微少領域の化学組成を反映しています.これまた,だいたいですが,各元素のピークは,化学組成に比例して,大きくなったり小さくなったりします.このようなピークのことを特性X線(characteristic X-ray)と呼ぶみたいです.

特性X線について説明しますと,,,
原子が物理的に安定するのは,電子核に電子が満たされている状態であるときで,それを基底状態と呼びます.この基底状態にある原子に,電子を照射して内殻電子を放出させると,そこに空孔が生じて不安定な励起状態になります.
 不安定な励起状態にある原子は,1ns以下の時間内に基底状態に戻る遷移現象が生じます.遷移は,空孔になったところに,より外側にある原子核から,電子が遷移してきて基底状態に戻ることであります.このように遷移する電子は,外角の高いエネルギー準位から,内殻の低エネルギー準位に落ち込むので,そのエネルギー差に等しい電磁波が放射されてでてきます.この電磁波を特性X線と呼びます.また,そのエネルギーは元素に固有の値であります.
画像は神奈川科学技術アカデミーより転載しました

元素固有のエネルギー値は以下の感じです;
Element E(keV)
4 Be 0.109
5 B 0.183
6 C 0.277
7 N 0.392
8 O 0.525
9 F 0.677
10 Ne 0.849

ちなみに,各元素のエネルギーは,波長分散法で用いる波長値と反比例の関係にあります.
エネルギー E(eV)=12399/λ(波長:Å)
波長分散法については,気が向くまで書くつもりはありません;;

EDXスペクトラム

どうもボクです.

EDXを用いた化学分析っていろいろあるんだけど,その基本原理は簡単で,検出器に入射してきたX線をああだこうだって感じで使い分けて,試料の定性分析や定量分析を行います.

分析モードは大きく分けて,点分析,線分析,面分析の3つに大きく分類できるかな?
なにかしらの試料に電子線を照射して,検出されたX線は波形データとして出力されるのですが,それは以下のような波形(=スペクトラム~)としてコンピュータ上に映し出されます.
rochester.eduのサイトから入手した画像です

上のスペクトラムをご覧になるとよく分かると思うのですが,何本かの山が見えますね?これをピークと呼んだりすることが多いです.鉄(Fe)とチタン(Ti)と酸素(O)のピークが見れます.このようにして,電子線を照射した部分の構成元素の概要が大体分かります.さらに,その部分がどのような元素で構成されているのかが判れば,試料の定性分析が行えます.鉄やチタンを多く含み,酸素も含むので,Fe-Ti酸化物と言えることができるでしょう.ただ,その物質が何であるかは,判断できません.厳密に物質名を特定するためには,定量分析が不可欠となりますが,その事に関しては,また今度書くことにします.

後日,EDXスペクトラムについて補足をしたいと思います.

EDX検出器

どうもボクです.

今回は,EDX検出器について簡単に触れたいと思います.

EDX検出器って,一般的には,Si(Li)検出器やシリコンドリフト検出器などの半導体検出器で構成されています.EDX検出器に飛び込んできたX線は,そのエネルギーに比例した数の電子ー正孔対を作るので,それを電流として取り出すことによって飛び込んできたX線のエネルギーを知ることができるっていうものなのです.

Si(Li)検出器(Silicon detector, Solid State Detector: SSD)っていうのは,シリコン単結晶にリチウムをドリフトさせて作った半導体検出器です.ふつうは,リチウムの拡散の防止と電機ノイズを低減させるために液体窒素で常時冷却しておかなければなりません.

シリコンドリフト検出器(silicon-drift detector:SDD)っていうのは,通常のSi(Li)検出器と比べて,数十倍高い計数率で測定ができるので,プローブ電流を高くして短時間で分析ができるというものです.最近,このタイプの検出器が多くの企業で製造されております.ただ,エネルギー分解能は,Si(Li)検出器と同等なのに対して,低エネルギー側のX線の感度は低いらしい.液体窒素冷却が不要なので,ユーザーにとっては有り難いものかもしれない.

EDXの製造メーカーの巻

どうも,ボクです.

EDXを製造しているメーカーっていくつかあるんですよね.
まぁそういうメーカーってSEMも一緒に作っている場合がありますけどね.

じゃ,とりあえず,列挙してみますか!
いちおう記事の横のコンテンツバーみたいなところに,SEMとEDX製造メーカーを列挙していますが,もうちょっと丁寧な感じに書いてみたいw

まず
日本電子さん
JED-2300/2300F
たぶん,ここが一番日本で有名なSEM-EDXメーカーさんでは無いでしょうか?もちろん,その他の分析装置も製造されているみたいですが,SEM関係では,世界中にみても超有名な気がします.EDXの取り出し角度は,35°

つぎ
日立さん
   画像見あたらず・・・><
日本電子さんとライバル関係にあるのかな?ここも超有名SEM-EDX製造メーカーです.EDXの取り出し角度は35°.
EDX,とGoogleなどで検索して,企業のホームページなどにアクセスした場合,だいたい日本電子さんか日立さんのSEM-EDXを導入していることが多いですね.日本だと

つぎ
島津さん
SUPERSCAN SSX-550
日本のEDX製造メーカーで有名なのは,次はここではないでしょうか?EDXの取り出し角度が,52.5°という驚異の技術を持つ会社.しかし,ここのEDXが導入されているって企業などはあまり知らない.なんでだろうか...
EDXって取り出し角度が理想的には90°というのがベスト.だた,現実的に不可能だから,多くの企業はいろいろ頑張っているみたいっす.

ここまでは,SEM-EDXの製造メーカーの紹介でした.次からはSEMは製造せず,EDXのみ製造しているってメーカーをちょこっと紹介します.
まず,
EDAXさん
Genesis XM4
EDXオペレーションソフトが充実!って感じのメーカー.日立さんのSEMのページにも紹介されている.

つぎ
堀場さん
EMAX x-act
もうすこし詳細な情報をホームページにあげて欲しいと思った.日立さんのSEMのページにも紹介されている.

ほかに,EDX製造メーカーってあるのかもしれないけど,日本の企業ってこれくらいかしら?

海外だと
CamecaさんとかOxford InstrumentsさんとかThermo Fisher ScientificさんとかThomson Scientific Instrumentsさんとかが有名なのかしら?
ボクは日本人なのでよく分かんないです・・・

EDXの概要2

どうもボクです.

前の記事では,主にSEM-EDXに関する基本情報を書いてみたけど,最近では,EDXRFっていうものも出回ってきているのです.

EDXRFってのは,energy dispersive x-ray fluorescence spectrometerの略なんですけど,日本語では
エネルギー分散型蛍光X線分析装置って呼びますかね.

XRFっていう分析装置の方が有名かも知れないけど,最近ではSEM-EDXのように走査型のXRFつまりEDXRFってのが出てきています.たぶん近い将来,SEM-EDXは絶滅して,EDXRFが主流な時代が訪れるかもしれないと勝手に思っています.

だって,また今度書くけど,SEM-EDXは,それなりに高級な価格だし,定量分析法がかんなりややこしい.それに対して,EDXRFは,(たぶん)SEM-EDXより安価だし,定量分析法は,かんなりシンプルだし,微量元素の分析だって行えちゃうシロモノですからね.SEM-EDXでは,微量元素分析なんてムリっすから・・・

EDXRFに関することは今日でおしまい
次からは(SEM-)EDXの事について書きます,チャオノ

EDXの概要

どうも,僕です.

EDXについて,いろんな事を書いてみよう!というスタイルで,ブログを開設しました!

じゃ,まずEDXって何なの?

energy dispersive X-ray spectrometryの略なんだけど,EDXとよんだりEDSと読んだりします.
日本語は,エネルギー分散型X線分光器とかエネルギー分散型X線分光法とか,もうちょっと略して,エネルギー分散法とかって呼ばれてますね.
まぁ要するにですね,エネルギー分散型X線分光器を使ったX線分光法なのですよ.

こういうEDXの検出器というのは,電子顕微鏡(SEM)などに取り付けられています.

じゃあ,SEMって何なの?ってなると,説明しないといけないのかな?ちょっとブログの趣旨に反するんですが,ちょっと書いてみよう.

話が長くなるんですが,,,,
SEMってのは,電子銃室にW(タングステン)フィラメントなどが設置されていて,そこに大きく電圧をかけてやるんです.だいたい20kV前後かな?それから,フィラメントにも電流(エミッション電流)を流してやるのですが,電圧をかけられたことによって,電子が引っ張られるのです.そういう電子の束のことを電子線と呼んだりします.electron probeって英語で書きます.
そうやって引っ張られた電子線は,SEMの鏡筒を通過するんだけど,いろいろな電気的な操作によって絞られていくのです.最終的には,試料にぶちあたるのですが,このとき直径が数百オングストロームとかまで絞られているらしい.人によっては1ミクロンの直径だと言っている人もいるけど,まぁ大差ないでしょ.
そして,電子線が試料にぶち当たったときに,いろんな物が試料から発生します.2次電子(secondary electron)とか、反射電子(backscatter electron)とか特性X線(characteristic x-ray)とかね.
EDXは,この特性X線を半導体検出器によって検出して,様々な分析を行う分析法と言えるでしょう.

いっぱい説明すると疲れますね!
じゃ,また今度,なんか書きます,ばいばいノ

2010/10/01

データ集2

どうもボクです.

今日は,代表的な酸化物の重量比と平均原子番号のリストです.

平均原子番号っていうのは,2種類以上の元素からなる化合物の場合,それぞれの元素の原子番号をZi、濃度をCiとすると、Zav=ΣCi×Ziで表します.今回は,wt (elem.)を元素(酸素以外)の濃度,wt (oxi.)を酸素の濃度として,Ave. Atom. No.(平均原子番号)を示しています.
Elem.
Atom. No.
Oxide
wt (elem.)
wt (oxi.)
Ave. Atom. No.
Na
11
Na2O
0.742
0.258
10.23
Mg
12
MgO
0.603
0.397
10.41
Al
13
Al2O3
0.529
0.471
10.65
Si
14
SiO2
0.468
0.533
10.81
14
SiO
0.637
0.363
11.82
P
15
P2O5
0.436
0.564
11.05
K
19
K2O
0.830
0.170
17.13
Ca
20
CaO
0.715
0.285
16.58
Sc
21
Sc2O3
0.652
0.348
16.47
Ti
22
TiO2
0.600
0.401
16.39
22
TiO
0.750
0.250
18.49
22
Ti2O3
0.652
0.348
17.13
V
23
V2O3
0.680
0.320
18.20
23
V2O5
0.560
0.440
16.40
Cr
24
Cr2O3
0.684
0.316
18.95
24
CrO3
0.520
0.480
16.32
Mn
25
Mn3O4
0.720
0.280
20.25
25
MnO2
0.632
0.368
18.74
Fe
26
Fe2O3
0.699
0.301
20.59
26
FeO
0.777
0.223
21.99
Co
27
CoO
0.787
0.214
22.94
Ni
28
NiO
0.786
0.214
23.72
Cu
29
CuO
0.799
0.201
24.77
29
Cu2O
0.888
0.112
26.65
Zn
30
ZnO
0.803
0.197
25.67
Ga
31
Ga2O3
0.744
0.256
25.11
Ge
32
GeO2
0.819
0.181
27.67
As
33
As2O5
0.652
0.348
24.30
33
As2O3
0.757
0.243
26.94
Se
34
SeO2
0.712
0.288
26.50
Rb
37
Rb2O
0.914
0.086
34.52
Sr
38
SrO
0.846
0.154
33.37
Zr
40
ZrO2
0.740
0.260
31.69

データ集1

どうもボクです.

元素,略号,原子番号,原子量一覧っす.
書くこと,思いつかないから,手抜き投稿っす.
ごめんさい><
Element
Symbol
Atom. No.
Atom. Wt.
Hydrogen
H
1
1.008
Helium
He
2
4.003
Lithium
Li
3
6.941
Beryllium
Be
4
9.012
Boron
B
5
10.81
Carbon
C
6
12.01
Nitrogen
N
7
14.01
Oxygen
O
8
16
Fluorine
F
9
19
Neon
Ne
10
20.18
Sodium
Na
11
22.99
Magnesium
Mg
12
24.31
Aluminum
Al
13
26.98
Silicon
Si
14
28.09
Phosphorus
P
15
30.97
Sulfur
S
16
32.06
Chlorine
Cl
17
35.45
Argon
Ar
18
39.95
Potassium
K
19
39.1
Calcium
Ca
20
40.08
Scandium
Sc
21
44.96
Titanium
Ti
22
47.9
Vanadium
V
23
50.94
Chromium
Cr
24
52
Manganese
Mn
25
54.94
Iron
Fe
26
55.85
Cobalt
Co
27
58.93
Nickel
Ni
28
58.71
Copper
Cu
29
63.55
Zinc
Zn
30
65.37
Gallium
Ga
31
69.72
Germanium
Ge
32
72.59
Arsenic
As
33
74.92
Selenium
Se
34
78.96
Bromine
Br
35
79.9
Krypton
Kr
36
83.8
Rubidium
Rb
37
85.47
Strontium
Sr
38
87.62
Yttrium
Y
39
88.91
Zirconium
Zr
40
91.22


いじょw